F1エンジンの現状を探る(1)
前回はピストンの材質やピストン周りの潤滑のことを書きましたが、クランクケースやシリンダーブロック、シリンダーヘッド周辺の技術についても書いてみたいと思います。
現在の4サイクルエンジンは、F1を頂点として、私たちの使う乗用車のエンジンまで、我が国の自動車メーカーは、ほとんどがDOHCという形式を使っていて、1シリンダー当たり4個のポペットバルブを持っています。
ママの軽自動車のエンジンとジェンソンの駆るホンダF1のエンジンが、同じ基本形式であるという所も実に面白いことですが、軽自動車のエンジンはたぶん普通にメンテナンスすれば20万kmはトラブルフリーで動き続けると思うのですが、F1のエンジンは1000km~1300kmで壊れても良い代わり、あらゆる部品を薄く軽く、材料を出来るだけ使わないで必要な強度を得るように研ぎ澄まされています。
その結果、シリコン系アルミ合金でブロックなどを作る現在の2.4リットルF1エンジンはドライ状態では70kg程度の重さに収まっています。
F1のエンジンに一番近い市販車のエンジンとしてV形6気筒2500CCのエンジンを引き合いにすると、およそ半分~1/3の程度の重量になるでしょうか?
一体どこがそんなに軽いのか?といっても、すべての部品が軽く作られていると言うしかなく、これ以上軽くすると壊れてしまう、というレベルにすべての部品が軽量化されているわけで、ビス1本、ピン1本にいたるまで、強度がありすぎないように作りこまれているのがF1エンジンと言うことなのです。
当然のようにエンジンの重量にとって一番影響のあるシリンダブロック、シリンダーヘッド、クランクケースなどはダイキャスト成型、砂型グラビティー鋳造、砂型真空減圧鋳造、ロストフォームグラビティー鋳造、ロストワックス真空鋳鋳、溶湯鍛造などを駆使して、肉厚の薄くしかも鋳造欠陥の少ない強度のある鋳物で作られ、その上で放電加工や、機械加工で完成に至っていると考えられますが、シリンダーブロックや特にシリンダーヘッドを全てダイキャストで作れないのは、3次元的広がりのあるウオータージャケットが金型成型や機械加工では作れないため、どうしても砂型シェルを利用した鋳造
が必要なためなのです。
鋳物のどこをどれくらい薄くすると壊れるかは、3D・CADとCAE解析ソフトでほぼ解るので、そうした最適化設計を行った上で実際に作り、加工、組み立てして、ベンチテスト、負荷ベンチテスト、実車テストを行う中で弱いところをさらに洗い出して行くのです。
エンジン本体となるクランクケースとシリンダーブロックは、700馬力のエンジン出力の反作用をすべて受けとめるだけの強度が必要ですが、2.4リットル自然吸気エンジンの発生トルクはF1エンジンとはいえ300Nm程度と思われ、さほどのものではないでしょうから、サスペンションのアームなどをクランクケースなどに直接マウントするレイアウトなら、そちらからの応力のほうが問題とされることでしょう。
シリンダブロックは当然スチールライナーの無いアルミシリンダーに硬質な表面処理を施したものではないかと思いますが、やはり此処も正確には判りませんが、以前ならニッケル・シリコンカーバイドメッキ(ニカジルメッキ)か、ハードクローム・ポーラスメッキ(ロータリーエンジンのハウジング内面処理等)等で、さらにマイクロディンプル処理(WPC処理)等も考えられます。
WPC処理は、ミクロンオーダーの粒子をショットピーニングよりずっと高速で金属表面にぶつけて、表面の組成を再結晶させると言う技術で、エンジン部品のほとんどに摺動性の向上の為に使われているかも知れず、表面処理としては優れた性能をもたらすものです。
続く。
現在の4サイクルエンジンは、F1を頂点として、私たちの使う乗用車のエンジンまで、我が国の自動車メーカーは、ほとんどがDOHCという形式を使っていて、1シリンダー当たり4個のポペットバルブを持っています。
ママの軽自動車のエンジンとジェンソンの駆るホンダF1のエンジンが、同じ基本形式であるという所も実に面白いことですが、軽自動車のエンジンはたぶん普通にメンテナンスすれば20万kmはトラブルフリーで動き続けると思うのですが、F1のエンジンは1000km~1300kmで壊れても良い代わり、あらゆる部品を薄く軽く、材料を出来るだけ使わないで必要な強度を得るように研ぎ澄まされています。
その結果、シリコン系アルミ合金でブロックなどを作る現在の2.4リットルF1エンジンはドライ状態では70kg程度の重さに収まっています。
F1のエンジンに一番近い市販車のエンジンとしてV形6気筒2500CCのエンジンを引き合いにすると、およそ半分~1/3の程度の重量になるでしょうか?
一体どこがそんなに軽いのか?といっても、すべての部品が軽く作られていると言うしかなく、これ以上軽くすると壊れてしまう、というレベルにすべての部品が軽量化されているわけで、ビス1本、ピン1本にいたるまで、強度がありすぎないように作りこまれているのがF1エンジンと言うことなのです。
当然のようにエンジンの重量にとって一番影響のあるシリンダブロック、シリンダーヘッド、クランクケースなどはダイキャスト成型、砂型グラビティー鋳造、砂型真空減圧鋳造、ロストフォームグラビティー鋳造、ロストワックス真空鋳鋳、溶湯鍛造などを駆使して、肉厚の薄くしかも鋳造欠陥の少ない強度のある鋳物で作られ、その上で放電加工や、機械加工で完成に至っていると考えられますが、シリンダーブロックや特にシリンダーヘッドを全てダイキャストで作れないのは、3次元的広がりのあるウオータージャケットが金型成型や機械加工では作れないため、どうしても砂型シェルを利用した鋳造
が必要なためなのです。
鋳物のどこをどれくらい薄くすると壊れるかは、3D・CADとCAE解析ソフトでほぼ解るので、そうした最適化設計を行った上で実際に作り、加工、組み立てして、ベンチテスト、負荷ベンチテスト、実車テストを行う中で弱いところをさらに洗い出して行くのです。
エンジン本体となるクランクケースとシリンダーブロックは、700馬力のエンジン出力の反作用をすべて受けとめるだけの強度が必要ですが、2.4リットル自然吸気エンジンの発生トルクはF1エンジンとはいえ300Nm程度と思われ、さほどのものではないでしょうから、サスペンションのアームなどをクランクケースなどに直接マウントするレイアウトなら、そちらからの応力のほうが問題とされることでしょう。
シリンダブロックは当然スチールライナーの無いアルミシリンダーに硬質な表面処理を施したものではないかと思いますが、やはり此処も正確には判りませんが、以前ならニッケル・シリコンカーバイドメッキ(ニカジルメッキ)か、ハードクローム・ポーラスメッキ(ロータリーエンジンのハウジング内面処理等)等で、さらにマイクロディンプル処理(WPC処理)等も考えられます。
WPC処理は、ミクロンオーダーの粒子をショットピーニングよりずっと高速で金属表面にぶつけて、表面の組成を再結晶させると言う技術で、エンジン部品のほとんどに摺動性の向上の為に使われているかも知れず、表面処理としては優れた性能をもたらすものです。
続く。
この記事へのコメント
もう20年以上前だと思いますがルノーが最初に発明した仕組みです。バルブスプリングと言うのはカムでポペットバルブを押し下げて、その戻りを担っているのですが、高回転になると追従が間に合わなくなったり、スプリングの共振周期などの問題があって正確なバルブ動作が出来なくなります。一気筒当たり300CC程度のサイズのエンジンでは、バルブの重量やストロークの関係から、おおむね毎分1万3千回転付近がその限界になっていたようです。(マイク・ヘイルウッドの時代のホンダの2輪レーサー用の4サイクルエンジンでは、250cc4気筒で26000rpm程回していましたが、そのエンジンのバルブリターンはスプリングですが、バルブの質量が小さいため、その回転数でもバルブは追従していました)ルノーの発明したニューマチックというバルブリターンシステムは、エアーシリンダーと同じ方法でバルブを戻しています。
いくら機械的特性(材料強度・硬さ)が高くても、材料というものは摩擦に弱い。
そのため潤滑油が存在する。しかしながら、それでも弱いので
コーティングをする。
しかし、日立金属が開発した自己潤滑性冷間ダイス鋼SLD-MAGICは
コーティングレスで摩擦に強いことが特徴。そのメカニズムは
潤滑油と特殊鋼が相互作用を起こし、グラファイト層間化合物
(GIC)という高性能な潤滑物質を作るためであることが、日立金属技報
2017で公表された(炭素結晶の競合モデル;CCSCモデル)。
これにより機械設計は小型化され、摩擦損失と軽量化の同時
解決が見込まれ、自動車の燃費向上に大いに寄与することが期待
されている。